01 農村開発
JICAアフリカ地域CARD促進インフラ・機材整備にかかる情報収集確認調査(2020年~現在)
アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)とは、サブサハラ・アフリカ地域のコメの生産量を倍増させることを目標に、2008年にJICAと国際NGOのアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)が立ち上げた国際イニシアティブです。2008~2018年には同地域のコメ生産量の倍増を達成し、2019年からは2030年に向け、さらなる生産量倍増を目指しています。
この調査では、CARDに参加するアフリカ32カ国のうち、エチオピア、マダガスカル、ルワンダ、ウガンダ、コートジボワール、ガーナ、リベリア、ナイジェリア、セネガル、シエラレオネ、ザンビア、カメルーンの12か国を対象に、米の増産のために各国にどのような灌漑施設や機材等のハード面の整備が必要であるかの調査を行っています。
ルワンダにて稲作についての聞き取り調査
ドローン調査
01 農村開発
JICAナイジェリア生計向上のための市場志向型農業普及振興プロジェクト(2020年~現在)
ナイジェリアは農業に従事する労働者が就業人口の約7割を占めていますが、小規模農家が多くその生計向上は深刻な課題となっています。さらに、ナイジェリアでは、5歳未満児の約3割が慢性的な栄養不良状態であり、国民の栄養状態の改善も大きな課題となっています。
このプロジェクトでは、野菜や果物を生産する農家に、「作って売る」から「売るために作る」への意識変革を起こし、農家の園芸所得向上を目指すアプローチ(SHEPアプローチ)を導入し、小規模農家の生計向上と栄養改善を後押しする農業普及モデルを実践しています。その農業普及モデルをナイジェリア国内で持続的にするため、行政官等の役割に応じた研修の実施、普及人材の育成を支援しています。
SHEPトレーナー研修における市場調査実習
対象州の職員による農家向けの研修
01 農村開発
JICAベトナム国 ゲアン省農業振興開発計画策定支援プロジェクト(2016年~2019年)
ベトナムでは2014年から「日越農業協力対話」が開始され、ベトナム農林水産業の包括的発展のため、日越両国間の協力を推進するとともに、民間投資の連携によるフードバリューチェーン構築のための交流・協力が推進されています。中北部にあるゲアン省はそのモデル地域の1つとして選定されています。
本業務は、農畜産物の加工、流通、販売における透明性と安全性を向上させ、市場ニーズに基づいた農畜産物生産を行うフードバリューチェーンの構築を目指すものです。プロジェクトでは「農畜産物流通プラットフォーム」構築による関係者の能力向上と、市場ニーズと契約取引に基づく農畜産物生産体制の構築を目指して40のパイロット事業を展開しました。その内容は、カンキツ類の品質向上や出荷時期の調整、安全性の高い野菜・畜産物の生産出荷、ブランド地鶏やオレンジの供給体制の強化、ショウガ、コメ、ジャガイモなどの加工用品種の導入、抹茶やハーブティなどの開発など、多岐にわたります。
ビジネスマッチングの様子
加工用ジャガイモの計量・出荷の様子
02 水資源・灌漑開発
JICAルワンダ国灌漑水管理能力向上プロジェクト(2019年~現在)
ルワンダでは、農業がGDPの約33%、労働人口の約7割を占める主要産業であり、政府は農業生産と農家所得の向上に向け、灌漑開発を進めています。その取り組みの一つとして、灌漑施設の運営維持管理の責任を、政府から農民主体の灌漑水利組合に移管する政策を推進しています。しかし、制度や体制の整備が不十分で、支援を行う政府や地方行政の技術的知見や経験等の不足により、農民主体の活動はできていません。
このプロジェクトでは、低湿地が広がり灌漑開発のポテンシャルが高いとされている地域を主な対象として、行政支援組織の組織強化や灌漑水利組合の育成を進め、灌漑施設管理が地元によって行えるようにする活動を支援しています。
チアシードの生育状況を確認
農協メンバー対象 農協管理・ジェンダー研修の集合写真
02 水資源・灌漑開発
JICA東ティモール国ブルト灌漑施設改修計画(2013年~2017年)
東ティモールでは生計の中心が水稲栽培であるにもかかわらずコメの生産性が低く、食糧安全保障及び経済開発にとって大きな課題となっています。特にティモール東北岸地域のブルト灌漑地区では降雨量が少なく、さらに洪水による取水施設の崩壊と土石堆積による水路機能の低下により取水が不安定な状況にありました。これに対し日本政府は2013年度に無償資金協力「ブルト灌漑施設改修計画」の実施を決定しました。
NTCIは本事業のコンサルティング業務を請け負い、ブルト灌漑地区に建設する灌漑施設として、固定堰、取水口、沈砂池等の取水施設、幹線及び二次用水路、排水路等の改修・整備の詳細設計を行い、本事業の事業費積算、入札図書作成、入札の実施、及び施工監理を行いました。またソフトコンポーネントとして組織運営・水管理に関する技術指導を行いました。同施設は2017年1月に完成しましたが、翌年以降に起こった洪水や河道・河床変動により護岸構造物に補修・対策工事の必要性が確認されたため、2019年から「東ティモール国ブルト灌漑施設改修計画フォローアップ協力(調査)(施設応急対策)」として施設応急対策にかかる協力を継続して行っています。
取水ゲート操作の研修
土砂吐工(正面)、取水ゲート工(右側)の完成状況
02 水資源・灌漑開発
JICAルワンダ共和国ルワマガナ郡灌漑施設改修計画(2016年~2020年)
ルワンダにおいて農業は全就労人口の約8割が従事する主要産業となっていますが、営農形態は小農主体で生産性が低く、また農地の多くが天水依存であり天候に大きく左右されています。安定した農業生産基盤を整備するため、灌漑面積の大幅な増加が農業セクターにおける重要な目標となっています。ルワンダ政府は東部県に位置するルワマガナ郡の低湿地帯を対象とした灌漑施設の整備・改修を重要事業と位置付け、日本の無償資金協力事業として実施する両国政府間の合意を締結しました。対象地区は日本の谷津田に相当する低湿地部で灌漑水田が行われている地区で3つのため池がありますが、老朽化による機能不全や容量不足のため水資源が有効に活用されていない状況でした。
本事業では2つのため池の嵩上工事、1つのため池の新設及び灌漑用水路の改修を行い、NTCIは担当コンサルタントとして施設の詳細設計、事業費積算、入札、施工監理等を手がけました。その結果、対象地区では二期作が可能となり、また幹線用水路の整備により効率的な水配分が可能となったことにより、地区内の灌漑面積の増加と農業生産の向上に寄与しました。
取水工建設
完工堤体と洪水吐
03 地域開発・コミュニティ開発
JICAシエラレオネ国カンビア県地域開発能力向上プロジェクト(2010年~2018年)
シエラレオネでは90年代に続いた内戦や2014~2015年に流行したエボラ出血熱より国が疲弊しましたが、国際社会の支援と自助努力により社会・経済状況は徐々に回復し、復興から開発の段階にあります。ところが国の開発を担う行政の人員・能力の不足から「地域ニーズを的確に捉えて事業を計画・実行する」という行政サービスの基本が実践されていません。本プロジェクトでは、地方自治体職員の地域開発にかかる能力向上のために、コミュニティにおける開発ニーズの把握、開発計画の整理、これらを踏まえて地方自治体として実施すべき事業の優先度の設定を行い、実際に学校建設や保健所の改修などをパイロット事業として実施しました。さらにこれらの過程でみえてきた課題について、開発計画の策定や事業の実施に際してのポイントとして整理し「地域開発事業実施ガイドライン」としてまとめました。2022年からは「シエラレオネ国レジリエンス強化のための能力向上プロジェクト(モデルプロジェクト実施)」として、上記ガイドラインの広域展開・普及を図っています。
県議会職員によるコミュニティへのプロジェクトの説明を支援
中央省大臣、JICA職員、専門家による今後の普及に関する協議
03 地域開発・コミュニティ開発
JICAレバノン国ホストコミュニティ支援・地方機関能力強化のための情報収集・確認調査(2017年~2018年)
レバノンはイスラム/キリスト教の18の公認宗派のバランス、過去の内戦、イスラエルとの外交的緊張関係、パレスチナ難民の影響などを受けて非常に複雑な政治・社会的構造を呈しています。このような不安定性を背景に経済・社会開発の遅れによる地域間格差や所得格差が起こっているところにさらに、2011年からのシリア危機以降100万人を超えるシリア難民がレバノン国内に流入し、その数は人口の4分の1を超えています。シリア難民の存在はホストコミュニティの社会・公共サービスに大きな影響を与えており、コミュニティでの両者間の緊張を高めています。
本調査ではまず、シリア危機下のレバノンの一般概況や、難民、それを受け入れている地方自治体、担当する省庁の役割等を確認しました。また今後のプロジェクトの実施によって新たな紛争を生まないように、紛争予防配慮のための調査も実施しました。シリア危機下で様々なドナーや国際機関が支援する中、重複を避けるため関係者間で調整をしながら、本調査におけるパイロット事業では上水と生計向上分野にターゲットを絞り、急激な人口増により影響の出ている上水道の施設の改修や住民に対する生計向上に係る研修に取り組みました。
生計向上分野の研修
上水道のネットワーク(水を送水するポンプ)の改修
04 平和構築・復興支援
JICAアフリカ地域G5サヘル諸国の平和と安定に係る情報収集・確認調査(2021年~2022年)
アフリカのサハラ砂漠南縁に位置するサヘル諸国では、度重なる政変・政治危機による脆弱なガバナンス、農耕民と牧畜民の土地や水を巡る対立、人口増や気候変動がもたらす失業や食料危機を起因とする深刻な貧困の蔓延等課題が山積しています。加えて近年では暴力的過激主義の伸長、大量の難民・国内避難民(Internally Displaced Persons: IDP)の発生、これらが連鎖して起こる不安定な社会経済情勢が続いています。JICAはサヘル危機解決の糸口は住民と行政の信頼関係構築にあると考え、本調査ではサヘル5か国(ニジェール、チャド、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア)を対象に、地方行政を主軸テーマとし、難民・IDP・ホストコミュニティ支援、若者・脆弱層の支援に関する調査を行い、協力ニーズを分析するとともに、治安が悪く日本人の渡航が制限されている状況下での事業の展開を検討しました。調査の中では「経験共有セミナー」や「オンラインセミナー」を開催し、5か国から中央政府行政官と地方行政官・首長が参加し、各国の取り組みの報告や活発な意見交換が行われたほか、戦後復興や災害後の復興を事例として、復興プロセスにおける行政官の役割と責任について日本の経験が共有されました。
グループディスカッション
ニジェールで開催された経験共有セミナー
04 平和構築・復興支援
飯舘村長泥地区除去土壌再生利用技術実証事業(2018年~現在)
東北地方太平洋沖地震に伴う福島第一原子力発電所の事故によって、環境中に放出された放射性物質は、甚大な環境汚染を引き起こしました。特に放射性物質の被害の大きかった福島県では、汚染された土壌を除染して収納した“袋”が至る所に仮置きされ、その数は、およそ2,000万個にもおよび、飯舘村においても160万個に達しました。
この事業では、飯舘村内の除去土壌を再生資材化し、再生資材を盛り、通常の土壌で覆った農地で資源作物、園芸作物、イネ、花卉等の栽培実験を実施しています。この実験で、放射性物質の作物への影響、安定的な生産及び営農について、地区住民と一緒に調査を行うことにより、地域の復興を目指しています。
圃場実証試験における水稲収穫
一般見学会にて見学者と被災住民の対話
05 行政組織化
JICAボリビア国ポトシ県南西部基礎インフラ整備促進プロジェクト(2015年~2019年)
ボリビア南西部に位置するポトシ県は鉱業、キヌア栽培などの伝統産業に加え、観光資源に恵まれており、ウユニ塩湖などに海外からも多くの観光客が訪れますが、基礎インフラが整備されておらず、産業振興のボトルネックになっています。この原因として、予算不足、事務手続きの煩雑さ、県庁と市役所の連携不足、国内外の資金援助を獲得するための情報・能力の不足、事業の立案・評価のための技術力不足等の問題が指摘されていました。本業務では行政の事業管理運営能力(技術面、業務管理面)強化を目標として、県庁と県内の11市を対象に業務を実施しました。具体的には、県庁内に「事業調整・実施委員会」を設立して「組織能力強化プログラム」を策定し、県庁及び対象市役所の人材能力強化のための研修実施を支援しました。行政組織の強化により効率的な事業実施が可能となり、これまで停滞していたインフラ整備が促進されることが期待されます。実際に、組織能力強化プログラムの実践により県庁の掘削技師の能力が向上し、対象市における井戸掘削事業の執行率が500%以上改善される等の成果が発現しています。
山の中での灌漑水源の調査
県庁内に設置された事業調整・実施委員会の会議
06 人材育成(研修)
JICA課題別研修「サブサハラアフリカ地域・稲作開発振興(A)および(B)」コース研修業務委託(2016年~2018年)(2021年~2022年)
アフリカ地域では90年代後半以降、コメ生産の低成長に比して大幅な消費の増大によりコメの輸入量が急激に増加し、世界的な穀物価格上昇も相まって食糧不安を引き起こしており、緊急対策ならびに中長期的生産拡大が必要となっています。JICAはアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)と協力し、2008年に「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD:Coalition for African Rice Development)を立ち上げ、サブサハラアフリカ地域における稲作振興を積極的に支援してきました。
本業務では2016年度から始まる3年間で、CARDイニシアティブ加盟国(23カ国)から延べ74名を対象に、各国の稲作振興にかかる経験及び今後の方向性を共有すると共に、継続的な情報交換に向けたネットワーク構築を促進する目的で本邦研修を実施しました。日本の稲作の歴史的変遷を稲作生産者の苦労や工夫を交えながら紹介したほか、毎年異なる稲作技術をテーマとして設定し、各テーマに合った講師・視察先の選定及び事前調整、視察旅行への同行等、より効果的な研修プログラムとなるよう配慮しながら企画・運営を主導しました。また類似した問題を抱えるアフリカ諸国の研修参加者が、問題点やそれを如何に克服しているか等の事例を参加者同士で共有し、ディスカッションを促進するプログラムも設けました。
稲作農家視察の様子
稲作灌漑インフラ研修にて頭首工視察